和賀大乗神楽  (わがだいじょうかぐら)  岩手県指定無形文化財

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■旧和賀郡内だけに伝承された大乗神楽  図1

   口伝では、600年程前、和賀町煤孫の龍頭山馬峰寺の開基
「貴徳院円光法師」が創始したとされ、貴徳院法印神楽と呼ば
れていたようです。江戸時代久しく中断していた神楽を、幕末
の慶應年間に佐藤寅二郎が、妻の父親・南笹間の万法院永岩
法印から手ほどきを受け、煤孫の大乗神楽として再興しました。
   その後、更木の大福院、江釣子の自性院らと共に芸の研鑽
に励み、保存をはかってきました。明治8年と33年には自性院
(江釣子神社)で大乗会が貴徳院など近隣の法印と合同で開か
れ、自性院が舞の指導をしました。自性院の神楽は、「三日月
田山伏神楽」として、天保14生まれの高橋宮助が江釣子神社な
どの社掌(宮司)兼ねながら主宰していました。
   和賀大乗神楽は、佐藤寅次郎、高橋多喜蔵、武田三蔵、
三田市太郎、武田博、鈴木秋尾、武田忠見、亀田正樹から、
現在の鈴木俊逸(鈴木秋尾の孫)へとつながっています。昭和
49年に岩手県指定、昭和53年には国の記録選定を受けています。
   元旦には、煤孫の古舘神社(旧貴徳院)に参拝奉納し、別当
の武田家で舞初めをしています。その他、例年3月頃に旧正月
公演を当寺にて開催しています。また地元のおまつりや、北上
みちのく芸能まつりなど、各種イベントに出演しています。

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■和賀大乗神楽の演目について  図1

  三十三ある演目の中で、最も神聖な秘曲とされているのが
「榊(さかき)」舞である。伝授免許も厳しく、舞うときには髭のある
吽の白面を付け、ザイをかぶり、常衣(千早)の上に玉袈裟を掛
け、二本の幣束を背負い帯刀します。大乗神楽最高の祈祷舞で、
法印の資格を有する者しか舞えません。法印の資格を得るには、
七日間神社やお寺で籠って呪法や舞を師匠に従って修行します。
その間、肉、魚は禁止、修行者以外の火を用いてはならないなど、    
厳しい使来りがあります。
  榊舞は、手次や踏み足の所作、九字(手印)など、随所
に修験の呪法が強く残る祈祷舞です。榊舞には、「初夜」と「後夜」
があり、昼は「初夜」、夜は「後夜」を舞い、家内安全、悪魔退散、
五穀豊穣を祈り舞い続けるのです。長時間に及ぶ演目のため、
現在ではどちらかを舞います。

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煤孫ひな子剣舞  (すすまごひなこけんばい)  岩手県指定無形文化財

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■今も子供たちに受け継がれるひな子剣舞  図1

   北上市和賀町煤孫の「煤孫ひな子剣舞」は、和賀地方に伝承さ
れている子どもの剣舞の代表的な踊組であり、華やかな踊り、曲打
ちが見所で、念仏回向も唱えられ、神や祖霊に仕える処女舞の信仰
的行動とみられている。
   踊組は庭元・世話役・オカド(笛・太鼓等)・踊り手からなり、
オカドと踊り手は、小学生から中学生で編成しており、演目は11種
類である。
   演じられる時期・場所は、毎年8月16日の慶昌寺での盆の精霊
供養(夏剣舞)と、旧9月9日鎮守古舘神社例祭(秋剣舞)に奉納す
るほか、社寺の境内や民家の庭で踊られるが、現在は各種の芸能
大会や北上・みちのく芸能まつりなどでの公演が主となっている。
   明治12年に作成された煤孫中通り契約会「煤孫ひな子剣舞
順番帳」によると、江戸時代後期から現在まで継続している相互
扶助組織の中通り契約会が、田植踊とともに継承してきたとされて
いる。大正15年以後中断していたが、昭和23年に契約会として復活
し和賀町山口の千手観音堂に奉納している。
   昭和36年、地域の小学校の全面的な協力を得て、学校とともに
小学生への伝承を開始し、煤孫ひな子剣舞保存会が正式に発足
した。
   昭和57年、煤孫ひな子剣舞は、文化的価値とその活動が認め
られ、和賀町(現北上市)無形民俗芸能文化財に、平成元年には
岩手県無形民俗文化財に指定され、煤孫ひな子剣舞保存会はその
保持団体として認定されている。
   保存、伝承活動として、会員の次世代指導者の養成に努める
とともに、小中学校の夏休みの時期に地域の公民館において児童、
生徒への踊り等の指導を行うほか、小学校行事に合せて保存会から
会員が出向き指導を行うなどの後継者の育成に取り組んでいる。
また、地域行事への参加や毎年開催される北上みちのく芸能まつり
などの各種公演に出演し、地域文化の伝承活動に励んでいる。
なお福祉施設への慰問を行うなど様々な機会を通じた活動は地域
から大変喜ばれている。
   こうした煤孫ひな子剣舞保存会の今日まで永く芸能を継承・保存
に尽力し、後継者の育成活動に貢献してきた功績は誠に顕著であ
り、平成28年には道地ひな子剣舞とともに、地域文化功労者表彰
を授章している。


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和賀中央橋 門柱レリーフ

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「ひな子剣舞ものがたり」

制作:いわさき小学校図書ボランティア
原作:武田俶(たけだあつし)さん

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